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国際アルツハイマー学会でポスター発表

 2017年4月27日から29日まで3日間、京都国際会館で開催された第32回国際アルツハイマー病学会に参加しました。 14年ぶりに日本で開催された最終的に世界70か国からの850名を含む、4000人以上が参加したこの分野で最大規模の会議です。私は、28日と29日の2日間ポスター発表だったので、初日は、純粋に他の専門家の講演やワークショップに参加することができました。 

 この規模の国際会議参加は、2015年にMoMA、オーストラリアナショナルギャラリーと一緒に「美術館、アート、認知症」のテーマでパネルを組んで登壇したソウルで開催された第20回国際老年学学会以来でした。この時の会議は、医学、薬学、老年学の専門家が中心の学術的な会議でしたが、今回は共催者が「認知症の人と家族の会」であったため、多くの認知症当事者や家族、そして家族会の方々が参加されていて、特にポスターが展示された展示会場の雰囲気は全く異なりました。テーマも「認知症:ともに新しい時代へ」で、予防や早期発見などの医学系の分科会もあったものの、当事者や家族はもちろん、自治体関係者、認知症カフェ運営者、介護職、作業療法士など、様々な分野の人が集まって、認知症になっても自らの意志で生きたいように生きられる社会を作ろうという気運と ともに歩もうという暖かい連帯感に満ちていました。
 
 大会は、若年性認知症当事者である丹野智文さんの「認知症でも、自分の事は自分で決めて、自分らしく生きたい。そして、当事者が自立を目指しているスコットランドと比較して、日本はやさしくて、支援も行き届きなんでもやってくれる。でも、リスクがあっても、リスクをとって自分でできることは出来る限り自分でやりたいので、社会、周りはそれが出来るように助ける形の支援をして欲しい」との真摯なそして、しっかりした力強いメッセージで始まりました。彼のメッセージには、満場の監修が賛同し、ひときわ大きな拍手が送られていました。私も心から、彼の言葉に賛同し、感動しました。それは、認知症だからでなく、人として、誰でもが思うことだと思ったからです。リスクがあっても、自分の思うように生きることは、認知症の有る無しに関わらず特に周りの目が厳しい日本では、欧米以上に難しいことで、とても勇気のいることです。認知症というハンディを持ちながらも、それを実現しようとする彼の勇気は素直に凄いです。丹野さんはその後、文化会や当事者の認知症に優しい社会のワークショップでは、司会をつとめられ、ありのままのその姿にすっかりファンになってしまいました。
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続く、黒川清(日本WDC)の話では、ペッパーが登場。彼とのコミュニケーションを披露し、日本が誇るコミュニケーションロボットの介護の世界における可能性をアピールして、外国の方には受けていたようですが、ペッパーが人の代わりができるとは私には思えません。介護士不足の中、高齢者の話し相手がPEPPERなんて悲しいです。
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 1日目は、自分のポスターセッションも無いので、早朝からいくつもの分科会を梯子して日本以外にシンガポール、香港、台湾、オランダ、イギリス、インドネシア、スウェーデン、ルーマニア、イタリア、など沢山の国の認知症にやさしい社会作りの事例を学び、認知症の方の人権をどう守るか、その基準についての分科会や、非薬物的介入についての文化会に参加しました。大きな国際学会では、同時間帯に5つの分科会が実施され、特にこの会場はわかりにくく、分科会の場所を見つけるだけでも一苦労でしたが様々な国の事情、最先端の知見、取組など色々な発見や気づきを得ることができて充実した1日でした。

2日目は、朝7時ポスター会場に入り、一番乗りでポスターを掲示、用意したパンフレット200枚を設置しました。私の今回の発表は、認知症の方の社会参画のカテゴリーです。 

会議に参加している若年性認知症当事者の杉本欣哉、智穂夫妻がお手伝いくださり、一番乗りでポスターと智穂さん企画のアートリップ漫画を掲示しました。彼らは会期中も私と一緒にアートリップの説明を来場者にして下さり、とても助かりました。ポスター発表は28日と29日の2日間。ひっきりなしに来場者があり、この2日間はほとんどポスターに張り付いている状態になりました、結果160枚のパンフレットを配布することが出来ました。
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認知症当事者の妻であり、アートリップの認定コンダクターであり、自身が横浜で認知症カフェを経営されている杉本智穂さんが、来場者に絵画パネルを使ってアートリップの説明をして下さっています。感謝です。
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パンフレットにコメントを寄せてくださった認知症当事者ワーキンググループ副代表の佐藤雅彦さん他多くの方にポスターを見て頂けました。佐藤さんは、5年前に私がMoMAのプログラムを最初に日本でトライアルで実施したときに参加してくださった方です。彼の言葉に背中を押して頂き、私は、認知症の方と家族のための対話型プログラム ARTRIPを日本で普及する決心をしました。

一方、分科会の方にはあまり顔を出すことができず残念でしたが、認知症に関する最新の科学的知見のセッションで認知症を起こす病気のプロセスは、20年前から始まっているかもしれないこと、PETなど最新の主要なバイオマーカーで早期発見が容易に可能になったこと、認知症当事者の方によるワークショップやシンポジウム、認知症に優しい社会を図る指標についてなどのいくつかの興味深い分科会に参加しました。
 
 最終日の29日は午後2時でポスター展示を撤去した後、大ホールでの若年性認知症のセッションを拝聴。認知症でも若年性というのは、働き盛りの方も多く、高齢者のアルツハイマー病等で引き起こされる認知症とは異なる。順天堂大学病院の新井平伊先生の概要説明に続いて、4000人の聴衆の前に次に登壇されたのは、女性を見て私は驚いた。なぜなら、前の晩、街中のおばんざいやでの認知症当事者ワーキンググループの打ち上げに参加した後、丹野さんたちとタクシーに分乗して会場近くのプリンスホテルでの会議ディナーにも参加したのだが(二回目のディナー、実はこのディナーチケットも初日のレセプションでたまたま話した女性から行けなくなったからとゆずられたものだった。) 彼女が最後の全体講演をするような有名な先生とは全く知らず、気楽にお父様が仕事で日本に来てよく日本のお土産を買ってきてくれたこと、や私の昨年のオーストラリア シドニーでの体験についての話をしたりしてすっかり親しくなっていた。これも運命か。実は、密に若年性認知症の方たちの意欲と能力を要する彼らとともに歩む新たなプロジェクトを構想中なので、最後に若年性認知症の世界的な権威の先生と偶然、隣の席になり、仲よくなったのも 偶然の出会いに運命的なものを感じざる終えませんでした。

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           自分の講演の直前にポスター展示を見に来てくださった. Adrianne Whithall 博士
           この直後に彼女は大ホールで若年性認知症の多様な障害、多様なケアをテーマに講演された。

怒涛のような四日間でありましたが、今回は特に認知症の方の人権、認知症の方の気持ちを尊重して彼らとともに生きる、とはどんなことなのか、何が必要なのか、そんな社会で私、そしてアーツアライブは何ができるのか、するべきなのか、を強く意識することができました。また、丹野さんをはじめとする認知症ワーキンググループのメンバーの方々にもお会いし、彼らと話しをし、大きな勇気も頂きました。ありがとうございました。 参加して良かったです。

ちなみに学会で見聞きした多くの情報の整理はこれから。とてもここに書ききれません。すみません。
 

 

by artsalive | 2017-05-09 22:10 | 研究 | Comments(0)